2016年8月26日金曜日

85%の腰痛が原因不明

みなさん、こんにちは!ご機嫌よろしゅうございます。

今日は腰痛関連の記事で、久しぶりに比較的まともなものを発見したので、ご紹介します。
特に後半部分。私が繰り返し患者さんにお伝えしていることですが、要するに「レントゲンやMRIなどに写る画像上の変化と、痛みやしびれなどの症状は多くの場合、関係がない」ということです。
この事実は既に科学的に証明されていますし、臨床上でもちゃんと患者さんと真摯に向かい合っていれば明らかなのですが、なかなかこういった事実と素直に向き合えない医療者が多いようです。

その結果、無駄な手術や治療により治らなかったり、あまつさえ悪化させられてしまったり...軽はずみな医療者の言動により絶望の淵に叩き落されてしまったり諦めてしまったり...。
こういった患者さんが未だに後を絶たないのが現状です。

この現状には医療者、治療家としてはただただ怒りの感情しかありません。また、患者さんから「レントゲン撮って...と言われた」「MRIを撮って...と言われた」などと聞くと怒りを通り越して呆れかえってしまいます。
そして、つらそうな患者さんを見ているととても悲しくなります...一日も早く「痛みの真実」に一人でも多くの人が気づき、痛みから解放される人を増やせるよう、こういった「真実」伝えていきます。




85%の腰痛がなぜ原因不明とされるのか?
医者と患者はすれ違っている!?

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腰痛を引き起こす原因はあまりも膨大shutterstock.com
 腰痛の人は日本全国で推定2800万人いると言われている。特に中高年に多く、40〜60歳代の約4割が腰痛に悩んでいる。腰痛を感じて病院に行き、すぐに治っていれば、こんなに腰痛持ちが多くなるわけがない。つまり、病院で解決できていない腰痛が多いということだ。
そして腰痛は、解決できない以前に、85%は原因すら特定できない「非特異的腰痛」、診断名で言えば「腰痛症」なのである。

85%もの腰痛が「原因不明」で「異常なし」である理由

 たとえば、ぎっくり腰で這うようにして病院に行き、レントゲンを撮り、さらにMRI検査まで行ったのに「どこも異常はありません」と診断されることがある。「まともに立って歩くこともできないのに、異常がない!? そんな馬鹿な!」と思うが、これは実によくある話だ。
 医師の「異常なし」と患者の「異常なし」には乖離がある。この場合、医師の「異常なし」は決して「どこも悪いところはない」という意味ではない。医師が考える一刻を争う重篤な病気や、レントゲンなどに映る骨の異常などはないというだけに過ぎない。
 患者は医師に「黙って座ればピタリと(悪いところを)当てる」ことを期待する。少なくともレントゲンやMRIなどを撮れば、どこが痛みの原因なのか、見つけられるはずだと考える。最適な治療法は必ず1つしかないはずだと思っている。
 しかし、それは患者の幻想だ。医師は最初に鑑別診断を行う。患者が一番に訴える症状を聞いて、その症状から考えうる疾患リストを頭の中に思い浮かべる。腰痛の原因となる疾患は実にいろいろある。尿路結石やすい臓炎などの内臓の病気、腹部大動脈瘤など血管の病気、化膿性脊椎炎や結核性脊椎炎などの背骨の病気、そして、もちろん椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの整形外科的疾患まで、そのリストは膨大だ。
 腰痛を引き起こす疾患リストの中のいずれなのかを絞り込んでいくことになるのだが、医師はそこで除外診断を行う。除外診断とは、がんなどの一刻を争う病気や手当をしないと危険な骨折など、より重篤で治療を急ぐ病気の可能性をひとつひとつ確かめて除外していく診断だ。この除外診断のために、レントゲンなどを撮るのだ。
 そして、一通り考えられる重篤な疾患の可能性を排除できたとき、医師はほっとした思いと共に「異常はありません」と言う。しかし患者は、痛いのに「異常がない」はずがないと思うから、医師に不信感を抱くし、医者は役に立たないと感じる。処方された鎮痛剤をごまかしだとすら思ってしまう。
 痛いのに「異常がない」状態とは、いったいどんな状態なのか? たとえば、ぎっくり腰はおおむね「腰の捻挫」である。捻挫とは、関節に無理な力がかかって可動範囲を超える動きをしたことにより、骨と骨がずれはしなかったものの、関節の周囲の靭帯が伸びるなどして内出血や炎症を起こした状態。骨に異常はないし、靭帯が切れたわけでもないので、レントゲンには異常が映らない。従って、医師は原因をおおよそ推測はしているが、どこの部分がどう損傷しているかはっきりとは特定できない。この場合、このぎっくり腰は、腰痛の85%である原因が特定できない「非特異的腰痛」と診断される。
 しかし、捻挫はしばらくすれば、おおむね自然に治る。痛みが3か月以内に治まれば急性腰痛。ところが3カ月過ぎても痛い、それどころか何年も痛いことがしばしばある。非特異的腰痛の慢性腰痛だ。

しばしば解決にならない「腰椎間板ヘルニア」の診断

 
 腰痛と聞くと、多くの人が思い浮かべる「腰椎間板ヘルニア」。脊椎の硬い骨である椎体と椎体の間にある、クッションと関節の役目を果たす軟骨の一種、椎間板が、骨の間から飛び出してしまった状態である。飛び出した椎間板が神経を圧迫すると神経痛が生じて、痛みや痺れ、運動麻痺などが起こるとされている。多くの日本人が「腰痛=腰椎椎間板ヘルニア」と考えるが、実は腰痛のうち腰椎椎間板ヘルニアはわずか4〜5%に過ぎない。
 それでも椎間板ヘルニアと診断されれば、原因箇所もはっきりして、治療方法もはっきりあると思っている人が多いのではないだろうか?
 実は「腰椎間板ヘルニア」の診断は難しい。レントゲンでは「もしかしたら......」ていどしかわからない。MRI検査などをすれば確率が上がるので、自分の腰痛の原因を知りたいと思いつめた患者は、医師に迫って、お金をかけて検査する。それでも「腰椎間板ヘルニア」と断定できない場合もある。
 患者は悪い個所があれば、どこの病院で誰が撮ろうが、レントゲンやMRIにまちがいようもなく映るものだと思うが、これまた幻想。整形外科のさらに腰痛を専門とする医師が、まず患者から、いつ、どういう動きをしたときに、どこがどう痛むのか、丹念に時間をかけて聞き出して、腰痛を引き起こしている問題個所が腰のどのあたりなのか、見当をつける。そのうえで、その部分をその問題個所が映りやすいように、さまざまな角度から技師が映す。その画像を専門家が分析しながら読み込んで、ようやく見つけられる。
 では「腰椎間板ヘルニア」と確定診断が出たら、治療が進み、すっきりと腰痛とおさらばできるのか?
 実はそもそも「腰椎間板ヘルニア」と腰痛は必ずしも結びつかない。1995年に国際腰痛学会で報告された、衝撃的な研究がある。腰痛を訴えて椎間板ヘルニアと診断された人と、腰痛の経験がない健康な人を調べたところ、健康な人の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性が発見された。椎間板変性とは、加齢などにより椎間板が老化して、椎間板の水分が減少することにより弾力性が失われた状態のこと。椎間板の一部にヒビが入り、痛みが走ることがある。この研究により、椎間板に異常があっても、ほとんどの人は腰痛を感じないことが明らかにされた。
 異常の程度問題で、異常がひどく、ヘルニアのため神経がひどく圧迫されているから痛むケースもある。しかし、痛みを感じていない人と感じている人の異常の程度が変わらない場合も少なくない。腰痛があり、かつ腰椎間板ヘルニアがあったら、腰椎間板ヘルニアが腰痛の原因だと考えるが、実は2つにはなんの関係もなく、ヘルニアの治療をしても、痛みが減らない可能性も大いにある。
 椎間板ヘルニアなど異常がはっきりわかれば、すっきり治るわけではなさそうだということがわかるだろう。そもそも、患者は医師に「治す」ことを期待しているが、治すのは実は患者自身であり、医師はそれを手伝うに過ぎない。特に「異常がない」腰痛の場合は、医師が手伝えることは少なく、治す主体は患者自身である。
 さらに衝撃的な事実を伝えれば、ヘルニアがあっても「様子を見ましょう」と、ときどき診察で確かめるだけで治療を行わずにいると、9割のケースでヘルニアは自然に消滅してしまう。
「腰椎間板ヘルニアだった! 手術してすっきり治して、腰痛とおさらばだ!」という考えが、いかに甘いかわかってきただろう。だから、かつては多かった腰椎間板ヘルニアの手術は、近年、あまり行われなくなった。手術しても治らない、むしろ悪くなった、と不満を持つ結果が多いからだ。
 原因不明の慢性腰痛の真の原因は、いったいどこにあるのか? 実はそこには腰痛に対する根本的な考え方や、治療のしかたに関するまちがいがあったのだ。多くの腰痛のレントゲンには映らない原因とは何か? 次回はそこに迫る。

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