2016年8月23日火曜日

“健康”食品で健康被害という皮肉

みなさん、こんにちは!ご機嫌よろしゅうございます。

本日の記事ですが、少々長いです(笑)
ただ、要するに“いわゆる健康食品”といわれるようなものに依存するのではなく、きちんとした食生活を送り、自分の身は自分で守りなさい、ということです。

やれ「トクホ」だ「健康な食事」だと国民がそれに踊らされているうちは、同じような制度や食品は永遠に出続けます。
当たり前です。国民がそれを「求めている」のですから。
誰も見向きもせず買ったりもしなければ、当然、企業も売らなくなりますし、国もそんな「国民ウケの悪い」制度など作らなくなります。

国民ひとりひとりが健康に対してきちんと意識を持ち、そういったものに頼らず健康管理をしていくことが、何より大事なのではないでしょうか?



健康食品、規制緩和で健康被害急増?
届出制により安全性・有効性の審査が形骸化か
「Thinkstock」より

機能性表示食品が4月にスタート

健康食品の機能性表示を解禁いたします」
 4月から新たな機能性表示食品制度がスタートした。安倍晋三首相は国民が健康を自ら守ると共に、特に資本力の弱い中小企業・小規模事業者のビジネスチャンスのために、米国の制度を参考に世界最先端の新制度をつくると胸を張り、このように宣言した。
 だが、科学的裏付けを欠く米国サプリメントを手本にした国の審査・許可不要の新制度で、果たして国民は健康になるのだろうか。

トクホと“いわゆる健康食品”の差

 戦後の高度経済成長を経て飽食時代を迎えた1980年代、生活習慣病に関する啓蒙が進んだことを皮切りに健康志向が強まり、体調を整えるなどの食品の機能性にスポットライトが当てられた。一方で、医薬品まがいの健康食品が横行し、さまざまな健康被害が起きた。
 そこで当時の厚生省は91年、健康食品の中で機能性を表示できる例外として、特定保健用食品(通称・トクホ)制度をスタートさせた。トクホは食品の有効性(機能性)・安全性について国の審査を受けると共に、表示についても国の許可が必要だ。
 2001年、トクホに次いで栄養機能食品制度が創設された。これはビタミンとミネラルの栄養成分の機能を表示できるが、トクホと違い、国の審査・許可は必要ない。
 トクホと栄養機能食品の2つは、総称して保健機能食品と呼ばれる。健康食品の中からこの保健機能食品を除いた、錠剤・カプセル・粉末などの医薬品に似た形状のサプリメント、栄養補助食品や健康補助食品などは、通称“いわゆる健康食品”と呼ばれる。
 トクホであれば、「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収を穏やかにします」などの表示が許されるが、“いわゆる健康食品”では、「毎日を健康に過ごしたい方へ」「いつまでも元気に歩きたい方へ」など、あいまいなイメージ的表現しか許されない。

企業と消費者とのトレードオフ

“いわゆる健康食品”に加え、野菜などの生鮮食品や一般の加工食品など、すべての食品の場合、(1)国が定めるルール(食品表示法の食品表示基準)に基づき、(2)企業の自己責任で食品の安全性・機能性に関する科学的根拠などの必要事項を、(3)販売予定の60日前までに消費者庁長官に届け出れば、(4)トクホ並みの機能性表示ができる――というのが、機能性表示食品だ。
 厳しい審査・許可を受けずに届出だけで、トクホと同等の表示ができる機能性表示食品は、まさに“いいとこ取り”だ。これは企業に対して極めて異例な特別待遇ではないだろうか。
 食品の機能性・安全性の問題は、企業と消費者との間のトレードオフ、「あちらを立てれば、こちらが立たず」の関係になりがちだ。つまり企業の特別待遇は、逆にそれだけ機能性表示食品を摂取する消費者が、期待外れや意味のない出費、健康被害などのダメージを受ける機会が増えることを意味してはいないか。

企業の特別待遇の経緯

 なぜ、このようなことになったのか。
 第二次安倍政権発足間もない13年1月に始まった規制改革会議の検討項目の1つとして、「一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備」についての議論が行われた。
 そこでは、特に(1)栄養機能食品は対象成分がビタミンなどに限定されている、(2)トクホは安全性・有効性を確認するための臨床試験(ヒト対象試験)が必須であり、そのための時間と多額の費用がかかり、中小企業にとってはハードルが高い――などの問題が指摘された。
 その結果、14年6月半ば、機能性表示を容認するとした「規制改革実施計画」と「日本再興戦略」について、閣議決定がなされた。
 それは(1)米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にする、(2)国ではなく、企業などの責任で科学的根拠を基に機能性を表示できる――といった新たな方策を検討するために、消費者庁に「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」が設置された。
 14年7月末、食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書が作成され、それを受けて
「機能性表示食品」が食品表示法に基づく食品表示基準に定められた。同基準は今年3月に公布され、4月から施行された。
 

科学的裏付けを欠くデタラメさ

 日本の機能性表示食品制度の参考にしたのが、米国の、食品の補充を意味する「ダイエタリーサプリメント」の制度だ。これは日本の厚労省に当たる食品医薬品局(FDA)の許認可は不要で、販売後30日以内にFDAに届出をすれば、事業者の自己責任で「関節の健康促進に寄与します」など構造・機能表示が可能だ。食品は錠剤、カプセル、粉末などサプリメントに限られ、疾病リスク低減表示はできない。
 だが、この米国の「ダイエタリーサプリメント」には重大な問題がある。米国保健福祉省監察総監室の12年の報告によれば、次のようなことだ。
 同監察総監室が、体重減少・免疫機能に関する127の製品を対象に表示の適切さについて調査した。その結果、127製品について事業者から提出された557件の臨床試験データのうち、有効性に関する表示内容を実証するために重要な4点(表示とその根拠)のすべてについて考慮したと考えられるのは、1件もなかったという。
 また、20%の製品では禁止されているにもかかわらず、疾病に関する表示がなされていた。このほか、構造・機能表示の根拠として、30歳大学生の手書きの学期末レポートを提出した例もあるというから驚くほかはない。まさに科学的裏付けを欠くデタラメのオンパレードだ。

消化器・皮膚系が多い日本の健康被害

 一方、日本の“いわゆる健康食品”などの健康被害について、こんなデータがある。食品の新たな機能性表示制度に関する検討会の資料によれば、09年4月~14年2月末に消費者からの申し出が約2700件(ただし、因果関係などは未確認)あった。
 特に消化器や皮膚系の事故情報が多く、「サプリメントを飲んで激しい腹痛、下痢、嘔吐で脱水症状になり、1 日入院した」「健康食品を購入して1カ月ほど飲んでいたら、顔に湿疹が出てきた」などのほか、治療に1カ月以上かかった例が167件あった。また13年の重大事故として、健康食品の1カ月服用による急性肝炎や、健診で薬剤性肝障害と診断されたケースもある。

“いわゆる健康食品”への期待と依存

 健康被害の多発にもかかわらず、14年3月、15~79歳の全国男女3000人対象の消費者庁の調査では、興味深い結果が出ている。
 それによれば、調査前の1年間に健康食品を摂取した人は全体の4割以上(43.8%)で、(1)妊娠中・妊娠計画中、(2)20~64歳(なんらかの疾病あり)、(3)中学生以下の子どもに健康食品を与えている、(4)65歳以上の高齢者の順で多かった。
 摂取した健康食品の種類は全体でトクホが4割以上(44.7%)で、次いで“いわゆる健康食品”が4割近い(38.4%)。
 なぜ“いわゆる健康食品”を摂取するのだろうか。“いわゆる健康食品”に関する次の4つの質問に対し、「とてもそう思う」と「そう思う」を合わせると、いずれも全体のうち(1)食事で摂取しにくい栄養成分を摂取できる(70.2%)、(2)摂取で健康維持(53.8%)、(3)摂取で病気予防(46.5%)、(4)試験などで安全性が証明(41%)と、肯定的な回答の比率が高い。健康被害をよそに、健康不安に駆られて“いわゆる健康食品”に期待し、依存する人が多いようだ。
 ちなみに“いわゆる健康食品”の市場は、90年代初めの4000億円から13年には1兆2100億円へと約3倍に伸びた。トクホの同13年の6100億円を加えれば、健康食品は1兆8200億円の巨大市場だ。17年には市場規模が2兆1450億円へ急拡大するとの報告もある。

届出制度の形骸化で健康被害増加か

 機能性表示食品について、消費者団体などはどう見ているのか。日本生活協同組合連合会はまず「消費者庁は米国の表示制度について、消費者の健康保護、利益確保の観点から、より慎重な姿勢で検討し、食品表示基準(案)として整理したことを評価」とした。
 確かに消費者庁は米国のダイエタリーサプリメント制度を、日本の反面教師にした形跡がうかがえる。米国の「販売後の届出」を、日本は「販売前の届出」にした。また、機能性の科学的根拠としてヒト対象の臨床試験か、研究レビュー(発表された研究論文などの文献をすべて見て評価)が必要などとする事業者向け全111ページに及ぶ「ガイドライン」を公表した。だが、片や日本生協連は、こうも指摘している。
「届出制度が形骸化してしまえば、米国のように、科学的根拠に基づかない商品が流通することによって、消費者の…健康が損なわれるおそれがある」
 当初から新制度に反対の全国消費者団体連絡会は「重大な懸念は届け出た機能性成分の安全性や効果について、国や公平な第三者機関による科学的な評価を受けていないこと」として否定的だ。
 同様に反対の日本弁護士連合会も「届出制である以上、…安全性・有効性に関する情報の審査は、形式的なものにならざるを得ず…健康被害を生じさせ…」と指摘する。
 企業の自己責任というが、健康被害などを発生させた場合の罰則が強化されたわけではない。また、“いわゆる健康食品”の健康被害の問題も放置したままの新制度のスタートだ。
 健康不安と健康被害の狭間に立つ消費者は、何をどうすればよいのか。先の食品の新たな機能性表示制度に関する検討会委員の梅垣敬三国立健康・栄養研究所情報センター長は「バランスのとれた食事や運動などの生活習慣が、健康の保持増進の基本です」と諭す。この言葉を噛みしめながら、健康食品に依存せず、野菜たっぷりの食生活の原点に返り、自分と家族の自己防衛を図りたい。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

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