2016年8月31日水曜日

「ストレス」と腰痛

みなさん、こんにちは!ご機嫌よろしゅうございます。

今回も腰痛について。
私も腰痛に限らず、様々な慢性的な体の原因について説明する時に「いわゆるストレス」の話をしています。
この記事ではそれ以上詳しく書いてありませんが、「いわゆるストレス」がどうして影響するのかを説明するためには脳科学は外せません。
そこを書くと長くなってしまうのでここでは書きませんが、「ストレス」と一言で言うのは簡単ですが実際にはいろいろあります。
「ストレスで腰痛になる」と言うと、「ストレス」という言葉にやたらと過剰に反応する方が患者さんにも医療者にもたくさんいます。
ですので、便宜上「ストレス」という言葉を患者さんに説明する時にも使いますが、「ストレス」という言葉のみに反応するのではなく、要するに「原因は体の方にあるのではなく、脳(内面)にある」という本質を理解して欲しいなと思います。




精神的なストレスが慢性的な腰痛を引き起こす!
そのメカニズムとは?

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自分の腰痛の真の原因を知らずにいると深刻な結果になることも... shutterstock
 3カ月以上続くような慢性腰痛の多くには、ストレスが関わっている。骨や筋肉の問題がないわけではないが、ストレスがその痛みを増大させている。慢性腰痛にはストレスによる心因性の腰痛が非常に多いのだ。
 腰痛と言えば、原因として腰椎間板ヘルニアを思い浮かべる人が多いだろう。だが、実は腰痛のない健康な人の8割近くに椎間板ヘルニアがあり、ヘルニアがあっても痛みを感じていない人が多く、腰椎間板ヘルニア=腰痛の図は成立しないことがわかっている。
 痛みの原因となりうる状態があっても、痛みを感じる人と感じない人がいる。その両者を分けているのが、ストレスだ。ストレスは「気のせい」ではなく、体の仕組みとして、腰痛を起こしたり、腰痛を強めたりする。

ストレスが人体に与える影響とは?

 そもそもストレスとは何なのか? ストレスは必ず体に悪いものなのか?「適度なストレスはむしろ必要」という話を聞いたことがある人もいるのではないだろうか?
 ストレスはもともとは物理学用語で「物体に力が加わった時に生じる『ひずみ』」を指し、医学用語でも「刺激が体に加えられた結果、体が示すゆがみや変調」を指す。一般的に使われている「ストレス」は、ストレスを引き起こす刺激や環境要因を指す医学用語「ストレッサー」に値する。
 人間関係や社会的な状況などから来る心理的なストレッサーばかり思い浮かべがちだが、暑さや寒さ、騒音などの物理的なストレッサー、汚染した空気や薬物、アルコールなどの科学的ストレッサー、細菌や花粉などの生物学的ストレッサーもある。
さて、ここから後は、「ストレス」という言葉を、医学用語の「ストレス」ではなく、一般的な意味で用いていくことにする。
 ストレスはいったい人体にどのような影響を与えるのだろうか?
仕事のプレッシャーや夫婦喧嘩など、社会的な問題がストレスになるようになったのは、人類の歴史から見れば、ほんの最近の話。人類が誕生してからこれまでの99%以上の時間、人類のストレスは獣などを倒そうと戦うか、獣などから逃げるかというシーンでのストレスだった。
 ストレスによって体に最初に起こる反応は、実はこの戦ったり、逃げたりしなければならない状況において、優位にしてくれている。ストレスは人体を戦闘モードや逃走モードにするスイッチなのだ。
 たとえばストレスは高血圧のリスクとして知られている。ストレスがかかると、血圧が上がり、脈拍が速まる。実はこの状態は、すばやく動きやすい、戦闘や逃亡において優位な状態だ。しかし、その状態が長く続けば、血管への負担は大きく、血管がボロボロになり、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの命に係わる病を引き起こす。ストレスがかかると消化活動が止まる。戦いの最中に消化が進んでトイレに行きたくなっても困るからだ。しかし、いつまでも消化しなければ、体は栄養を取れない。ストレスがかかると手に汗をかくのは、逃げるときにつかまった手が滑りにくいように、また、つかんだ武器を取り落さないようにするためだ。戦闘モードや逃走モードは生き抜くために必要だが、決して、長く続けられるモードではない。
 人体には痛みの感じ方を抑制するシステムが備わっていて、ストレスがこのシステムの働き方にも影響を与えている。そもそも人体は日々の動作の中でも常に痛みを感じている。歩行の際、上げた足を下ろす時、感じる痛みによって、足を地面につける力加減を調整する。そのたびに「痛いっ!」となっては、身が持たない。そこで常日頃は、脳から分泌されるノルアドレナリンやセロトニンによって、「下行性疼痛抑制系」システムが関節への衝撃で感じる痛みを適度に抑制している。
 ストレスを感じると、最初は戦闘意欲や逃走反応をかきたてるノルアドレナリンや意欲をかきたてるドーパミンの分泌が増えて戦闘モードに入り、同時に暴走しすぎないようにコントロールするセロトニンの分泌量も増える。興奮状態のときは痛みを感じづらくなる。
 しかし、現代社会では、ストレスは社会的なものが多く、戦う、逃げ出すといった身体的反応は実行に移せない。よりストレスがたまる。ストレスが長く続くと、やがてセロトニン等が枯渇する。その結果、「下行性疼痛抑制系」システムの働きは悪くなり、痛みは脳に強く伝わるようになる。結果、ストレスにより、痛みは増大する。

ストレスがストレスを、痛みが痛みを呼ぶ仕組みとは?

 ストレスを感じたとき、戦闘か逃走を即時に選べた原始時代とは異なり、現代社会ではその場でストレスを解決することができない。上司とそりが合わず、毎日、いら立ちを募らせても、解決の糸口はない。いつか部署を変わるくらいしか望みはない。その状態がストレスを拡大する。仕事と子育てで毎日くたくたなのに、自分は遊びほうけている夫にいらだつ。いくら言っても聞き流されてしまう。すべてを捨てて逃げることもできない。ストレスはたまるばかり。
 ストレスがたまったあげくに、デスクワークでの座りすぎや、こどもを抱きかかえての家事で腰痛。腰痛は「動いたら、また痛むのではないか?」という不安を呼び、腰痛そのものがストレスだ。さらに腰痛のためにやりたいことができずにストレスになる。
 病院に行けば、これほど痛いのに「どこにも異常はありません」。この医者ではだめだと他の医者にかかっても同様。病院への不信感がつのる。ようやく腰椎間板ヘルニアと診断され、「手術をしたら、すべて解決!」と思ったのに、手術後に痛みがゼロにはならない。病院への不信感と、痛みのストレスでいっぱい。
 また、痛みが長く続くことにより、痛みが生まれる。腰椎や周辺の筋肉など組織が損傷した痛み が継続すると、損傷した組織が修復された後も痛みが神経に記憶として残ってしまうことがある。よく腰痛に痛み止めを処方されて、「その場限りのごまかしだ」と思う人がいる。しかし、痛み止めで痛みを止めないと、痛む原因がなくなった後まで、神経に痛みの記憶が残り、原因もないのに痛みを感じ続けることになるので、痛み止めを使うべきときがあるのだ。

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